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感染症媒介蚊に寄生する昆虫寄生菌の探索とその病原性

 現在、マラリアやデング熱などを媒介する感染症媒介蚊の防除は、化学殺虫剤を使ってベクターである蚊を殺すベクターコントロールの手法が採られていますが、殺虫剤抵抗性の発達が世界的に問題になっています。その代替防除技術として生物防除が有効であることが認識されつつあります。当初我々も昆虫寄生菌によって蚊の成虫を防除できないか検討しました。

 ところが、蚊に寄生する昆虫寄生菌の研究論文の9割以上が幼虫のボウフラを対象としたものであり、世界中のジーンバンクを調べても、カ科から分離された昆虫寄生菌は50菌株程度しかありませんでした。つまり、成虫の蚊がどのような昆虫寄生菌に感染するのか、よく解っていなかったということです。 

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B. bassiana 60-2に寄生されたハマダラカ

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 そこで、我々は北海道とマラリアの大流行地域である西アフリカのブルキナファソで蚊の成虫を採取し、そこから昆虫寄生菌を分離しました。その結果、国産の蚊741頭からは、Beauveria bassianaB. brongniartiiIsaria farinosaLecanicillium spp.など298菌株の昆虫寄生菌の分離に成功しました。一方、ブルキナファソ産のガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)成虫1652頭からは、B. bassianaI. farinosaLecanicillium araneicolaなど94菌株の昆虫寄生菌を分離することができました。サハラ砂漠の南に位置し、日中は40℃を超え、湿度は5%を下回るブルキナファソの過酷な環境下も、昆虫寄生菌は普遍的に野生蚊に寄生していることが明らかになり、合計392菌株に上るカ科に特化したオリジナルの菌株ライブラリを構築することができました。 

​ブルキナファソでのサンプリング風景

 さらに、この菌株ライブラリを用いてハマダラカに対する病原性スクリーニングを行ったところ、対照区の半数致死日数(LT50)が16.6日であるのに対し、5.8日という非常に高い病原性を示すB. bassiana 60-2という菌株を検出することに成功しました。これ以降、高病原性菌株のB. bassiana 60-2を用いて各種実験を行なっています。

(これらはIshii et al., Fungal Ecology, 2015で報告した研究成果です)

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​ハマダラカに対する病原性スクリーニング結果

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