top of page

昆虫寄生菌は、昆虫の成虫や幼虫、蛹などの各生育ステージに感染性をもつことが知られています。さらに、昆虫の卵にも寄生することも報告されていますが、昆虫寄生菌の種や系統、昆虫種との組み合わせによって、昆虫寄生菌の卵への感染性は異なります。コナジラミとLecanicillium spp.に関しても様々な議論がなされてきましたが コナジラミ類卵とLecanicillium spp.間における感染性の見解は統一されていませんでした。コナジラミの卵は小さく、卵殻が硬いため昆虫寄生菌を使用した防除のターゲットとしては不向きだと考えられていますが、昆虫の卵は生まれてから孵化するまでの間、動かず、さらに作物を加害しない唯一のステージです。そのため、コナジラミの卵を防除のターゲットとし、防除が可能になれば、作物への被害が最小限に抑えられるのではないかと考えました。

名称未設定23.jpg
名称未設定24.jpg

これまでに当研究室では、Lecanicillium spp.がオンシツコナジラミおよびタバココナジラミの卵に侵入して殺卵すること、孵化した幼虫にも高い致死効果を示すことを明らかにしてきました。その一方で、Lecanicillium spp.は両コナジラミ卵に対し異なる感染性を示し、その差異は2種間の卵の成熟速度の違いに起因するものと考えられました。そこで次は成熟度の違うコナジラミの卵に対するLecanicillium spp.の影響を評価しました。産卵後4時間の卵(未成熟卵)と産卵後2日経過した卵(成熟卵)に昆虫寄生菌を接種したところ、未成熟卵は成熟卵よりも孵化率の低下が大きく、さらにより早い孵化幼虫の致死が確認されました。コナジラミの卵は産卵後から徐々に卵殻が黒く、硬くなります。昆虫寄生菌は物理化学的な力を利用し昆虫の体内に侵入するため、卵殻が硬くなる前(未成熟卵)が最も侵入しやすいと考えられます。これらのことからコナジラミ卵の成熟度合がLecanicillium spp.のコナジラミ卵寄生に影響を与えることが明らかになりました。

本研究により、コナジラミ卵が昆虫寄生菌の新たな防除標的となりうることが示されました。これにより、従来の防除より早く、かつ被害の少ない防除法の確立が期待できます。さらに今後は、コナジラミ卵をターゲットとした昆虫寄生菌の使用法などについても研究を進めていく予定です。

名称未設定26.jpg
bottom of page